大量の小豆粒をヒゲに見立てた奇抜なアートプロジェクト〝アズラー〟の仕掛人として脚光を浴びる若き現代美術家・境貴雄さん。常人には考えつかない発想で、思いをかたちにしていくアーティストの生態とは果たしてどんなものなのか──!? 街ゆく誰もが思わず二度見をしてしまう〝アズラー〟誕生のいきさつから、将来的な展望まで、謎めく男の〝正体〟に肉迫した。 「プロジェクト自体の広がりもぜんぶ引っくるめたものが〝アズラー〟なんです」 最先端ファッション〝アズラー〟とは!? ──ヒゲに見立てた小豆を顔に装着して写真を撮る『アズラー』プロジェクトの仕掛人でもある境さんですが、そもそも、なんでまた小豆を題材に? 「動機は単純で、子どもの頃からあんこが好きだったんですよ。で、大学3年の時に『自由に作っていいよ』みたいな課題で和菓子をモチーフにしてみたら、これが自分の中でしっくり来て。もともと敷居が高いイメージのある和菓子を、ちょっとキッチュに表現するっていう、その意外性がなんかおもしろかったんですね」 ──それが段々エスカレートして、最終的には小豆そのものになったと。 「もちろん、僕自身にも『このまま突きつめていいのか』みたいな自問自答はありました。ただ、いろんな文献を読んだりしてその歴史を調べていくと、こと祭礼やなんかでは、小豆が〝魔除け〟的な意味合いで重宝がられていたこともわかってきた。言ってみれば、そういった〝伝統〟が、僕のやっていることに対する〝お墨つき〟にもなったんです。いまでもおめでたいことがあると赤飯を炊いたりするように、日本人にとっての小豆は、すごく身近で特別なものでもありますしね」 ──確かに「なぜ作るのか」より「なにを作りたいか」のほうが重要だったりもしますしね。ちなみに、この『アズラー』ヒゲの材料はいったい? 「紙粘土ですね。紙粘土をひと粒ずつ手で丸めて、色を塗って、溶剤でツヤを出してます。『なんで本物を使わないの?』とも聞かれますけど、僕が表現したいのはあくまで、煮て柔らかくなった〝ゆで小豆〟のほうなんで、単純にゼロから作ったほうが手間もコストもかからないんですよね(笑)そもそも、僕自身が食べものを粗末にしたくないってのもありますし」 ──しかし、パッと見では「本物?」と見間違えるほどの精巧さ。とても紙粘土とは思えませんよね。
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